本記事の内容
● チルホールとは?
● どんな時に使う?
● チルホールの使い方
● チルホール使用時の注意点
【チルホールの使い方】伐採での使い方をプロが徹底解説【画像あり】
本記事では、伐採時における正しいチルホールの使い方について解説していきます。
1トン近い牽引力を持つ器具ですので、取り扱いには十分気を付けてください。
もし、素人の方で手に負えないような木を伐採する時は無理をせずプロに依頼してください。
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チルホールとは?
チルホールとは、様々な用途で使用される牽引器具で建設現場や林業現場、災害の救助現場などで使われています。
最大牽引能力は750㎏、自重は7㎏でどの方向に対しても牽引できるので非常に便利です。
本記事では、伐採時におけるチルホールの使い方を解説します。
林業現場ではどんな時にチルホールを使う?
林業現場(伐採現場)でチルホールを使うケースは主に下記の3つです。
● 周囲に障害物がある場合(町場での伐採など)
● 逆重心の木を起こしながら伐採する場合
● かかり木処理をする場合
周囲に障害物がある場合(町場での伐採など)
周囲に家などがあり、障害物を回避しながら伐採するときにチルホールを使用します。
チルホールで牽引しながら、木をコントロールして伐倒するイメージです。
町場の伐採では、伐倒方向を誤ると物損や人身事故につながるのでチルホールの使用は必須です。
逆重心の木を起こしながら切る場合
伐倒方向とは反対側に重心がある木を、起こしながら伐採する時にチルホールを使用します。
あまりにも傾いていたり、チルホールだけでは木を起こすのが困難な場合は、安全クサビを併用すると木が起きやすくなり安全に伐倒できます。
この際、ツルを切り過ぎてしまうと起き切る前にツルがちぎれて思わぬ方向に倒れてしまうので注意が必要です。
かかり木処理をする場合
山での伐採作業中に必ずと言っていいほど発生するかかり木ですが、かかり木による事故は毎年起きています。
安全、迅速にかかり木処理をするためにもチルホールの使用をおすすめします。
かかり木の処理については、下記の記事で詳しく解説しています。
チルホールの使い方を徹底解説!
伐採時におけるチルホールの使い方について詳しく解説していきます。
まずは準備する道具から見ていきましょう!
準備する道具
伐採する木の種類や大きさにより準備する道具は変わりますが、基本は下記5つを用意します。
● チルホール本体
● 専用ワイヤー(通常20m)
● 専用バー
● スリングベルト2本(台付けワイヤーでも可)
● ブロック(滑車)
チルホールの使い方
チルホールの使い方の手順は、下記の通りです。
1つずつ順番に解説していきます。
● チルホールを固定する木を選定する
● チルホールを木に固定する
● ワイヤーをチルホールに通す
● 伐倒する木にワイヤーのフックを固定する
● テンションを掛けて張る
チルホールを固定する木を選定する
まず最初にチルホールを固定する木を選定します。
チルホールを固定する木の絶対条件は下記2つです。この条件を満たせない木は、事故につながるので選定してはいけません。
● 伐倒木が倒れてきても安全な位置の木を選定する
● 牽引力に耐えられる木を選定する
伐倒木が倒れてきても安全な位置の木を選定する
伐倒木が倒れてきても、チルホールを操作する人に直撃しない位置の木を選定します。
どうしても直撃してしまう場合は、下の写真のような滑車を使用してチルホールをずらして安全を確保します。
牽引力に耐えられる木
チルホールの牽引力(750kg)に耐えられる木を選定します。
牽引力に耐えられる木を選定しないと、根っこが起きて大事故につながります。
固定する木は牽引力の2倍の強度がある木が望ましいですが、見た目では分かりにくいのでできるだけ太い木を選定します。
チルホールを木に固定する
スリングベルトを木に回し、絞るようにしてアイ(ベルトの輪っか)にチルホールのフックを固定します。
また、チルホールを固定する位置は出来るだけ木の根元に固定しましょう。
木の根元に固定する理由は、2つあります。
● 固定した木への負担が軽くなるから
● 高く固定すると、ワイヤーが張り上がってきた時にレバー操作が難しくなるから
フックは確実に固定
チルホールの牽引中にフックが外れると危険なので、フックに付いているセーフティキャッチは、固定したら必ず戻すくせをつけましょう。
セーフティキャッチは内側の金具を起こすと外れます。
ワイヤーをチルホールに通す
画像の赤丸印の解放レバーを引っ張って、フリーの位置にします。
バックレバーを、解放レバー側に倒すとワイヤーが入りやすいです。
チルホール本体の、前の穴に通して後ろの穴からワイヤーが出てくるまで通します。
通す時は、前後左右にワイヤーを動かしながら入りやすい場所を見つけましょう。
伐倒する木にワイヤーのフックを固定する
伐倒する木にスリングベルトを回し、絞るようにしてアイにワイヤーのフックを固定します。
これで牽引準備完了となりますが、下記のポイントを実施すると効果的に木を引き倒すことができます。
牽引作業開始、テンションを掛けて張る
牽引作業の手順は下記の通りです。
● ワイヤーがピンと張るまで前進レバーを動かす(張りすぎない)
● 切り手とコミュニケーションを取りながら張り具合を調整する
● 木が倒れ始めたら退避する
ワイヤーがピンと張るまで前進レバーを動かす(張りすぎない)
前進レバーにパイプハンドルを装着して、前後に動かしワイヤーがピンとなるまで張ります。
この時にワイヤーを張りすぎてしまうと、
● 木が急に動いて追い口切りが間に合わず、木が縦に裂ける可能性がある
● 張りすぎるとチルホール本体の安全ピンが飛ぶ可能性がある
テンションを掛けるとき、解放レバーをフリーの状態にしてワイヤーを手で引っ張ると早く張れます。
限界までは、フリーの状態にし手で引っ張ってワイヤーを張りましょう。
ダラゆるの状態から、前進レバーを前後させて張ろうとすると時間がかかり効率が下がるので注意しましょう。
チルホールの緩め方
切り手とコミュニケーションを取りながら張り具合を調整する
チルホールを使用して伐採する時に重要なのが、切り手とのコミュニケーションです。
ワイヤーの張りが足らないと、チェーンソーのガイドバーが食われますし、逆に張りすぎると追い口を入れた瞬間に木が倒れ始めるので、木が縦に裂ける「バーバチェアー」を引き起こしかねません。
木の状態を把握しているのは木を切っている人なので、「もう少し張ってくれ!」など密にコミュニケーションを取りながらチルホールを操作します。
切り手が目視で確認できない場合は、無線機を使うか中間に合図者を配置します。
木が倒れ始めたら退避する
木が倒れ始めたら速やかに安全場所に退避します。
木が倒れるタイミングも木を切っている人が1番わかるので、事前に逃げるときの合図を話し合って決めておきます。
● 大声で「逃げろー!」
● 呼子の使用
● 無線機の使用
チルホールの牽引作業時の注意点
チルホールで牽引して伐採作業を行う上で、いくつか注意点があります。
この注意点を守らないと、重大な事故につながるので必ず徹底しましょう。
● 必ずワイヤーの点検を行う
● 無理に力を掛けると安全ピンが飛ぶ
● 張る前に障害物を排除する
● 木が倒れる瞬間はチルホールから離れる
必ずワイヤーの点検を行う
チルホールを使用する前に、必ずワイヤーの点検をして下さい。
周囲に家があるような、危険なシチュエーションで使用することが多いと思います。
チルホールの牽引中に、ワイヤーが切れたら大事故につながりますので点検は必ず行いましょう。
無理に力をかけると安全ピンが飛ぶ
画像の赤丸にある2つの安全ピンは、無理やり前進レバーを動かすと割れて飛びます。
安全ピンが飛んでしまうと、チルホールのワイヤーを緩めることも引っ張ることもできなくなり最悪な状態に陥ります。
切り手とコミュニケーションを取り、重かったら安全クサビを併用するなど安全ピンが飛ばない対策が必要です。
チルホールのワイヤーを張る前に障害物を排除する
画像のように、チルホールのワイヤーに障害物が干渉していると危険です。
張った時に枝が飛んだり、ワイヤーが跳ねますので排除しておきます。
木が倒れる瞬間はチルホールから離れる
木が倒れた衝撃で、チルホールが跳ねてあなたに激突する可能性があります。
私は、腹に直撃し悶絶しました。(マジでいたい)
木が倒れ始めたら、速やかにあらかじめ決めておいた安全場所に退避しましょう。
木が倒れる瞬間はチルホールから離れて下さい。
倒れた衝撃でチルホールが跳ねてあなたに激突する可能性があります。
チルホールの使い方 まとめ
チルホールのは非常に便利で作業効率を上げてくれる道具です。
1台あるだけで仕事の幅が広がり、安全に伐倒作業ができますが使い方を間違えると重大事故につながります。
また、山でのかかり木処理で使う場合にも注意が必要です。
2名以上で作業を行う場合が多いので、お互いの退避場所は必ず確認しましょう。
フェリングレバーを使用したかかり木処理は、下記の記事で詳しく解説しています。
本記事が、あなたの安全なチルホール作業の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、ご安全に。